相続税と贈与税の損得分岐点の活用具体例

生前に贈与を行っていくのが得策なのかどうかを知るためには、まず自分の財産について何がどれだけあるのかを知ることが必要です。そして法定相続人等を想定し、配偶者の税額軽減等も適用した上で相続税額を計算してみると相続税について何%の税率が適用されているのかがわかります。相続税の税率40%が適用される部分があれば、それより低い贈与税率で贈与できれば節税できることになります。もちろんより低い贈与税率が適用できる範囲で長年にわたって贈与していけばより多くの節税ができることになります。

贈与するものによっては登記費用や登録免許税その他手数料等もかかりますのでそのコストも考慮にいれる必要があります。

また、現預金や有価証券などを贈与し、消費してしまった為、相続の時点で相続の納税資金が足りなくなってしまうようなことでは困ります。さらに贈与したものが相続の時点で値下がりしているような場合にはかえって節税にならなかったと言うことにもなりかねません。

従って少なくとも1年に一回程度の試算を行うことをお勧めします。

贈与後3年以内に相続が発生すると、贈与財産は、相続財産に含められて、相続税が課される。しかし、贈与税額控除があります。

相続の開始が近いことを知った相続人が、被相続人から生前に贈与を受けることで相続税の負担を不当に軽減することを防止するために、相続開始前3年以内に贈与した財産については相続税の対象にすることになっています。

相続(遺贈を含む)により財産を取得した人で、相続開始前3年以内に被相続人から贈与により財産を取得した場合には、その相続人の相続財産に贈与より取得した財産が加算されます。
加算される金額は、贈与された時のその当時の相続税評価額です。
そして、その財産を取得した時に贈与税を払っていればその贈与税額をその人の相続税額から控除します。

110万円の贈与が得とは限らない

1人が1年間に110万円までの贈与を受けた場合には贈与税はかかりません。
従って例えば子供2人と孫5人に毎年110万円の贈与を行えば、相続財産が110万円×7人=770万円毎年減っていきその分の相続税額はゼロになります。

計画された連年贈与は一括贈与とみなされる場合もある

一人が1年間に110万円以内の贈与を受けても贈与税はかからないので、単純に親が子供名義の預金に毎年110万円ずつ預け入れてこれで安心と思われている場合が多いようです。このように毎年毎年贈与を続けていくことを連年贈与といいます。計画的に贈与を行いたいと考えた贈与開始の時から10年とか15年といった長期の贈与の取り決めをしますと、定期の給付を目的とした「定期金の贈与」とみなされ、一括して贈与税がかかってきますので注意が必要です。

このようにならないためには、贈与契約は毎年行われなければなりません。

従って、贈与税の申告が必要ない110万円以下の連年贈与をすんなりと税務署に認めてもらうのは困難なことと心得ておく方が良いでしょう。少し税額を払って申告をしておくか、もらう側がその事実を認識し、印鑑や通帳を本人が保管しておくことも大切な要件です。

また、贈与契約書をきちんと取り交わし、公証人役場で確定日付を取っておくことも一つの方法です。

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